大型写真は 露出を撮って左右にカメラを動かして、また撮って重ねた撮影技術である。 普通の写真は35ミリのセンサーで撮られるが、センサーをまた動いてから露出して重ねると、撮られた面積は35ミリ以上になるので「大型」と呼ばれている。 人気な使い方は「パノラマ」である。その場合は撮りながらカメラを横に動かすことである。 露出が縦横に繋がる結果は巨大な写真である。 一枚30分くらいかかり、三脚が必要である。
カメラが構内の奥に置かれていた。 カメラは北へ向かって、日光が背景に暖かく映ってきた。 場所は森に囲まれ、フレーミングの右部は明るい末社。 朱色い鳥居の上に枝が風に揺られている。 その一方、左部は薄暗い木陰の一つ末社である。 パースから左の末社の両方を松木で縦に切させる。 早目に見ると狐の赤い布だけが見えるように末社は暗い。 しかし、左の背景に葉っぱの緑が闇を割いていて、対比が強くなった。 右部と左部の真ん中は道である。 道は明るい部分に至り、視聴者は目で線を辿って隠れた部分を自分で思い描く。
神社の表に末社が並んでいる。 被写体の末社に『石宮』が彫られた。 真ん中に小さな鳥居が3本重ね、両側に狐がきちんと4匹立てられていた。 石や狐にコケが生えて、右の狐の顔がコケに覆い込んだ。 末社の柱は景色を構え、赤色・朱色と濃い緑色のコケが石色の上に不思議に合う。
お墓が初めてファインダーに入った所、カタツムリが天辺に3匹ベトベトついていた。 荒い地衣と上ってきたカタツムリの組合せは目立ったので選ばれた。 裏に行ってしゃがんでみるとよく見違う小さな墓石が視線に並び、背景の逆光がフレームに流れて薄暗い木陰が明るく見えた。 前景はグレイの石や単調な柳の幹と緑色の草やコケであり、茶色・赤色葉っぱが地面に細かく散っていた。 背景の赤い葉っぱが逆光にぼけ、焦点が被写体に移るようになった。 さらに、病院の黒いバス停が背景に見えるが逆光に埋められた。 柳の木が構内を出るように左側に立ちあがり、柳の枝がまた右側に下がって揺らしている。 写真のお墓は五個である。 木の隣は幹みたいな墓石であるのでわかりにくい。
薄暗い木陰を出て広い墓場に入ると上からカサカサと吹かれた風が聞こえる。 頭を上に向けると、大きなオークの木が視野に広げられ、木の葉が風も揺らす。 木の丈夫な枝の上に蘚苔が苔むし、樹皮は低い光に暖かく照り返して枝の上部・下部が対比された。 その奇麗な景色をずっと眺められるので大型写真に選ばれた。
最後に。 墓場の南部に並木道がある。 日没の金色の光は木の葉の色を奇麗に強調した。 散った葉っぱが道に吹かれた秋の気持ちがした。 虫が光に輝き、黒歌鳥が写真家の後ろで歌いながら、道の突き当りにカメラがおいて大型写真が撮られた。 その結果はすごく大きな写真である。 並んだ木は街灯のように葉が映えるみたいであった。 それで秋の発見が終わって写真集がまとめ上がった。